2024年2月2日、射水市内の幹線道路に近い歩道を放浪していた迷い犬を保護しました。
現場で高岡厚生センターの方と迷い犬への対応についてお話しし、飼い主の方が見つかるまで一時的にピース・アニマルズ・ホームでお預かりすることになりました。
迷い犬は大型犬であるため、体に合った大型のケージを適切な場所に配置する必要があり、ピース・アニマルズ・ホームの能町施設の犬室のレイアウトを少し改めて準備してから犬を迎え入れました。その後、警察へ連絡して間もなく飼い主の方からご連絡がありました。迷い犬はピース・アニマルズ・ホームで一晩過ごし、保護の翌日、飼い主の方が犬の引き取りに能町施設を来訪され、迷い犬は無事に家に戻ることができました。迷い犬の腹部にあった大きな腫瘍と思われるものが気がかりでしたが、飼い主の方によると、以前に動物病院で診てもらった際、それは「良性」のもので、中身は脂肪の塊であると診断されたそうで、ひとまずはよかったと思います。
迷い犬の保護においては様々な方たちの関わりがありました。
迷い犬を歩道で保護してからピース・アニマルズ・ホームに向けて出発するまで、迷い犬が放浪していた区域の近くにある学校の学生さんが二人、状況を見守っていました。
学生さんたちは、飼い主や関係者らしい人が周囲に誰もおらず、ひとりで道を歩いていた犬が心配になり、私たちが迷い犬と遭遇する前から、犬をずっと追いかけてきておられたとのことでした。学生さんの一人はポメラニアンと暮らしているというお話をされており、一緒にいた友人の方もそのポメラニアンのことを知っているようでした。日頃から犬と身近に接しているので、迷っている犬を見て、放置しておくということができなかったのだと思います。
また、車を運転中に迷い犬を発見して、車で犬の後をずっと追ってこられた方もおられました。その方も迷い犬を発見し、すぐ近くには道幅が広く車通りの激しい幹線道路があるため、犬を心配して追ってこられたとのお話でした。
迷い犬を発見したとき、犬は首輪をしていたものの、リードやハーネスなどは着用していませんでした。犬を安全に繋留・保定するための用具を私たちは携行しておらず、性格や気質がわからない、体重30キログラム以上は確実にある大型犬に安全に対応できるかは判断として少し難しいところがありました。しかし、迷い犬が生活道路から出て、幹線道路脇の歩道を進みはじめ、事故にあう危険性が高まったため、迷い犬の私たちへの反応を確認しながら犬を保護しました。
犬の身元を示すものがないかを確認して、その区域を担当する厚生センターに連絡し、高岡厚生センター射水支所の職員の方たちが現場に来られるまで30分ほどの時間がありました。
迷い犬には穏やかそうな雰囲気がありましたが、空腹あるいは喉が渇いているのか、食べられそうなものを探すような仕草を頻繁にしていました。
迷い犬の保定中に懸念していたのは何らかの理由で犬がパニックを起こして抑えがきかなくなることです。保護現場は犬を散歩させている人を比較的多く見かける区域でもあります。散歩中の犬が近づいてくることで迷い犬が興奮する状況を特に危ぶんでいました。犬を散歩させている方や私たちが何をしているのかと興味をもって近づいてくる方たちと距離を保ちながら状況説明をするにはそれなりに大きな声を出す必要がありますが、それが犬を興奮させてしまう可能性もあります。
実際、犬を散歩させておられる方がこちらに向かってきて、かなりの距離があるにも関わらず犬同士が威嚇しはじめたことがありました。危ない状況に発展しそうな場面でしたが、上述した、迷い犬を車で追ってこられた方が散歩中の犬の飼い主の方に私たちが迷い犬を保護しているところで、この場を迂回していただきたいと説明してくださり、トラブルを防ぐことができました。その方は、何かが起きているのかと様子を見に来られた保護現場の近所の方たちにも同じように丁寧な状況説明をしてくださっていました。
上述した学生の方たちは、迷い犬から適度に離れた位置で静かに状況を見守っておられました。犬種などは違っていたかもしれませんが、犬はどのように関わってもらえれば安心できるかというようなことを生活の中でわかっておられる方たちが近くに一緒にいてくれたことが、迷い犬を落ち着かせることにとてもプラスに働いたように思います。
高岡厚生センター射水支所の職員の方たちが現場に来られて状況を確認され、迷い犬のピース・アニマルズ・ホームでの一時的なお預かりが決定し、現場からピース・アニマルズ・ホームへの迷い犬の移送を行う際、大型のケージを私たちの車には乗せることができなかったため、厚生センターの方たちに能町施設まで迷い犬を運んでいただくことになりました。保護現場から能町施設までは車で30分ほどかかる距離であり、定時をすぎている時間帯であるにも関わらず穏やかに対応していただきました。
迷い犬を能町施設で引き受けてから迷い犬の件で警察に連絡を行いました。受付された方から動物の保護関係の担当者への取り次ぎ、折り返しの連絡、飼い主と思われる方からの問い合わせがあったことの報告などをとてもスムーズにしていただきました。
やがて暗くなり冷え込んでくる時間帯、車通りの激しい場所で、迷い犬が怪我をしたり、事故にあったり、他の犬や人とトラブルを起こしたりすることもなく、安全に迷い犬を保護できて、飼い主の方へ無事に戻すことができたのは、皆さんのこうした見守りやご協力のおかげでした。この場を借りて関わってくださった皆さんに改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
迷い犬の引き取りの際、飼い主の方は、自分が知らない住まいの隙間などを犬が見つけて、そこから出て行ったのだろうか……というようなお話をしておられました。
今回の能登半島地震での富山県内の住宅被害は2024年1月30日の時点で6058棟にのぼります。(※「令和6年能登半島地震に係る県内被害状況(人的被害・住家被害等)」の「令和6年1月30日」の報告より)。迷い犬が放浪していた区域でも敷地の周囲に巡らされた塀や門が崩れていたり、外壁や屋根など様々なところにダメージがあったりする家が多く見られます。
震災の直後には特に大きな被害や損傷が家に確認されなかったとしても、その後の度重なる余震や降雪などの影響で家や、動物と暮らしておられる方たちの場合であれば、動物の逸走防止対策に用いられている備品などにダメージが現れ、動物たちを逸走させてしまうケースは大いにあると考えています。今回の迷い犬の件がそうしたものであるのかどうかはわかりませんが、そうしたことが起きていたとしてもおかしくはないように思います。
また、震災に由来する物理的なダメージがまったくなかったとしても、地震によるストレスや環境の変化が動物たちのメンタル面に大きく影響し、動物たちが震災以前と異なる行動をとりはじめ、それが動物たちの逸走に繋がりうるケースもありうると思います。
日頃から動物たちが逸走しないように様々な対策・対応をなさっておられる方、これまで動物たちを迷子にさせたことがない方、逸走しそうにないと思われる動物たちと暮らしておられる方たちも、いま一度、動物の逸走防止対策を点検していただければと思います。
迷い犬の飼い主の方は、犬の逸走後、ご家族の方から犬が逸走しないような対策をしっかりととるように言われたと述べておられました。
富山県の動物愛護行政に関するウェブサイト「とやま動物愛護」には、動物たちの災害対策に関する特集的なページや、動物を迷子にさせないための啓発資料やパンフレット、動物が逸走したり、迷子になっている動物を見つけたりした際の対応の仕方などについてふれたページがあります。こうしたものも活用・参照しながら、皆さんの近くにいる動物たちや困っている動物たちの命を守ってくださる方が少しずつでも増えてゆくと嬉しく思います。皆さんのご協力をお願いします。
※参考資料
「災害時のペットの災害対策備えていますか」(「とやま動物愛護」内のページ)
「動物愛護普及啓発関連ポスター・パンフレット」 (「とやま動物愛護」内のページ)
一緒に暮らしている犬や猫が逸走した際の対応、逸走中の動物を保護した際などの対応などについては、「とやま動物愛護」内の下記のページなどもご参照ください。
「その他の手続き? こんなときはどうするの??」