木村弓さん、覚和歌子さん制作の歌、『約束のいのち』について

 歌手・作曲家の木村弓さんと作詞家の覚和歌子さんに、動物愛護をテーマとして制作をお願いしていた楽曲『約束のいのち』が完成いたしました。

この歌について木村弓さんと覚和歌子さんからいただいたメッセージ、『約束のいのち』の歌詞と音源ファイルを公開いたします。

 

なぜ楽曲制作をお二人にお願いしたのかという理由や今後の展開などは、下記の「『約束のいのち』の制作の背景と今後について」でやや詳しく述べています。

この歌が、動物たちを愛護するということについて考えたり、皆さんがそれぞれできる形で、動物たちのためにできることを実践していったりするきっかけの一つになればうれしく思います。

木村弓さん、覚和歌子さんからのメッセージ

木村弓さんからのメッセージ

「人の心の奥にある優しさ、それに対する憧れや感謝の気持ちと共振できるようなメロディーを、という願いを込めて作りました。この歌を耳にされた時に、『気持ちがどこか明るくなった、元気になった』と感じていただければ、また、縁ある生き物を大切にしたいという思いを深めるきっかけにしていただければ、こんなにうれしいことはありません」

 

覚和歌子さんからのメッセージ

「人も動物も縁あっての出会いだったに違いなく、また『いのち』という意味においては平等な存在です。人間同士の付き合いと同じように、一つ一つの関係が掛け替えのないものであるように、という思いで綴りました。大事な家族であるペットとの愛情をお互いに味わいながら、心の言葉を交わしていただければ、作者冥利につきます」

『約束のいのち』

作詞:覚和歌子 

作曲:木村弓

歌:木村弓

 

すきとおる瞳 なだらかな背中の温もり

君がくれる光は ぼくをいつも待ってる

 

ちがう言葉 交わしながら

同じ夢を見てる夜

ふれた指が 伝えるだろう

思い合う気持ちを

 

きっといのちは遠い昔 約束したんだよ

またもう一度出会える幸せ こんな日が来るのを

 

おもちゃなんかじゃない 

友だちと言うんじゃ足りない 

代わりがきかないのは 

君もぼくもおなじさ

 

さようならは いつの日にか 

必ずおとずれるけど 

悔やまないで 抱きしめるよ 

思い出の全部と

 

たったひとつの夢を分けて ここにいるぼくたち

きっといのちにいらないものなど この世にはないはず

 

きっといのちは生きるものを ひとつにむすぶうた

きっといのちにいらないものなど この世にはないはず

約束のいのち
『約束のいのち』
作詞:覚和歌子 
作曲:木村弓
歌:木村弓
『約束のいのち』(歌・木村弓 作詞・覚和歌子 作曲・木村弓).mp3
MP3 オーディオファイル 2.9 MB

作曲・歌唱・ライアー演奏:木村弓さん

歌手・作曲家。ご自身が作曲、歌唱した映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」が大ヒット。詩人谷川俊太郎氏と共作した「世界の約束」も「ハウルの動く城」の主題歌に抜擢。竪琴ライアーの弾き語りのみならず、様々な形態での演奏活動を全国各地で展開中。

木村弓オフィシャルサイト

 

作詞 :覚和歌子さん

作詞家・詩人。平原綾香、SMAP、クミコなど数々のアーティストに作品を提供する傍ら、朗読、映画監督、脚本、翻訳など、詩作を軸足にマルチな活動を展開。「いつでも何度でも」をはじめとするジブリ作品の主題歌を担当。CD、書籍など著作多数。

作詞家・詩人 覚 和歌子 | 公認公式ファンサイト

 

ピアノ・アレンジ、演奏:中川俊郎さん

日本の現代音楽シーンを牽引しつつ、数々の企業 CM 曲も手掛けておられます。

ツイッター:https://twitter.com/t_nakagawa_jscm

『約束のいのち』の制作の背景と今後について

どうすれば動物愛護活動に多くの人たちの関心を向けることができるのか。動物愛護について関心をもたない人たち、私たちのまわりにいる動物たちを巡って、社会として向かい合わなければならない問題があると感じたことのないような人たちに、どうすれば興味をもっていただけるのか。

多くの人が関わることによってしか解決できない社会的な課題に取り組んでいれば、こうした問いにいつかは直面するものであると思います。私たちもこんな風に自問しながら活動してきました。

 

動物愛護や保護動物を取り上げた投稿や報道はSNSやニュースサイトで多く見られるようになりました。影響力のある人たちによる動物愛護に関する発信が増え、動物の生命や福祉に配慮する企業も増えてきています。

こうした傾向はよいことですが、関心や熱意が高まることで、関心を持たない人たちとの間にある温度差に、以前よりもはっきりと気づかされることがあります。活動が広がり、様々な人たち、多くの人たちと接する機会が増えることで、動物を愛護するということが定着している場はこの社会ではまだまだ狭いものであることにも気づかされます。

十年前と比べても動物愛護への関心や活動に携わる人は明らかに増え、対応できることや解決しやすくなったことも増しましたが、社会全体からすると動物愛護に関心を持つ人の数はまだとても限られたものです。

 

社会活動は地道に社会に根づかせてゆくことが大切で、それには普段の活動を知っていただくことが何よりもよいと思っています。動物愛護の啓発のために語れる場は以前より増えてきました。

私たちもSNSで日々の活動の様子を伝えたり、2019年4月からは定期的なラジオ番組をはじめて、地域で動物愛護に携わる方の活動をご紹介したりしています。TV・新聞などのメディアに出たり、イベント・講演会などの企画に参加したりする機会があれば、そこで動物愛護について語っています。

しかし、こうした場や機会があることさえ知らない人たちがまだ社会の大多数であり、そうした人たちにも動物愛護のメッセージを届けたり、動物愛護活動に関心を持ってもらえるきっかけを作ったりするにはどうすればよいかと長く考えていました。

 

ふと偶然、耳にした歌、気になった歌について調べはじめる中で、その歌が生まれた背景やその歌が社会に与えた影響を知り、世界の見え方が変わり、生活も変わってゆくという経験は皆さんにもあると思います。

この歌の制作のための初回の打ち合わせの報告ではこのようにも述べました。「歌や詩には力があります。たとえば小さい頃やどこかで読んだり聞いたりした詩や物語や歌の一節が、その後の生活の大事な場面で、身を律したり、窮境に立ち向かう力となることがあります」。これも歌が持つ力の一つであると思います。

こんな風に動物を愛護するということに気づいてもらえるきっかけとなったり、すでに動物愛護活動に関わっている人たちには励みとなったりするような、動物愛護をテーマとした歌があればよいと思いました。

 

宮崎駿監督には、その作品や様々な場面での発言から感じられる、生命に敬意を払う姿勢に以前から共感を覚えており、宮崎駿監督の作品を通じて知った『いつも何度でも』には特に惹かれるものがありました。

ある歌に深くゆさぶられる理由を探ってゆくと、その歌が自分の表層的な意識や経験ではなく、はるか昔、遠くにさかのぼる体験や記憶、自分の深奥にあるなにかと共鳴しているからそんな風に感じられるのではないかと思われることがあります。

そうした深い共感を抱くことができる曲の作り手の方に動物愛護のメッセージを発信してほしいという思いから『いつも何度でも』の木村弓さんにコンタクトをとり、楽曲を作っていただけるとご返事をいただきました。木村さんから、楽曲のピアノ演奏・アレンジに中川俊郎さん、作詞に覚和歌子さんをご紹介いただき、楽曲制作がはじまりました。

 

今回の楽曲制作はコロナ禍の最中に行われています。コロナ禍は収束せず、木村さん、覚さんに直接お会いして打ち合わせする機会を得ることはできませんでした。

曲はピース・アニマルズ・ホームの活動の宣伝となるようなものではなく、動物たちを大切にしようという思いが伝わるような歌となるようにしてほしいというお願いや幾つかのキーワード的なものなどを記したメモをお渡しはしましたが、普段の動物愛護活動がどのようなものであるかといったことや、活動の実情などについて十分にお伝えすることができない中で覚さんに歌詞を作っていただくことになりました。難しい条件下での詩作であり、大変な作業であったのではないかと思います。

覚さんに作っていただいた歌詞は、私たちの身近にいる動物たち、まわりにいる動物たちと私たちの間に築かれる縁や関係性のかけがえのなさへの認識から、類や種を問わず、生きるものすべてに等しく分かち合われ、私たちを結びつける「いのち」というものの美しさや不可思議さ、尊さへと想いを至らせるものです。

 

歌から連想され、想起されてくる情景が幾つかあります。それについて考えると、そこでは特別ななにかがあったわけでもないのですが、それはこの歌で歌われているような「いのち」というものにふれていた、あるいはそれにとても近づいていた経験であったように思います。動物たちと関わる中で、「いのち」というものにふれたような感触があるということが動物愛護という活動を続けている理由の一つであるようにも思います。

動物愛護に関心を持った理由や活動をはじめるきっかけはどのようなものであっても、関心を持ち続けるうちに、活動を続けるうちに、どこかでこうした「いのち」というものにふれることになるのではないでしょうか。ふれていたことに後から気づくという言い方がより適切であるかもしれません。

 

この歌は私たちの身近にいる動物たちとの関係から「いのち」というものへと私たちを導いてゆきますが、動物と暮らしたり、間近に接したりしたことがない人であっても、この歌が描いている情景のあたたかさをリアルに感じられるのではないかと思います。それは歌の持つ力によるところが大きいと思いますが、「いのち」というものは生きるものすべてに等しくあり、私たちはそうしたものをどこかで経験しているということの証でもあると思います。

覚さんの歌詞は動物愛護活動におけるとても大切なところにフォーカスされています。木村さんと中川さんはその詩想を歌としてよりよく具体化するために、レコーディングの現場でも次々とアイデアを出し合われ、曲の完成に向けて力を尽くしていただきました。

 

歌、楽曲というものはそれ自体がひとつの完結した存在ですが、聴かれ、歌われたり、人から人へと伝えられたりすることで育ってゆくものでもあり、開かれたメディアでもあると思います。

私たちもこの歌を皆さんに届けるための機会を積極的に作っていきたいと考えており、木村さん、覚さんをお招きしたチャリティ・コンサートや曲のCD化、この曲をベースにした動物愛護を啓発するための動画の制作などを考えています。

 

この社会で起きている動物を巡るあまりにも多くの問題に対して、私たちが団体としてできることは極めて限られたものです。動物に関する相談は毎日多く寄せられます。

「人と動物の関係の原点を考えながら、人と動物たちがより良く健全に共生し、共に幸福な生を全うできるような社会を築くこと」を目的として私たちは活動していますが、先はとても長いことを実感しています。

それでも、まわりにいる動物たちに優しく接してみたり、近くに動物に関する問題で困っている人がいて、手伝えることが何かあれば少しだけでも出来ることをしてみたりしようという人が一人でも増えると、その一人が歩んだ歩幅の分だけでもゴールには近づきます。

この歌にこめられたあたたかさは、まず私たち自身にとって、何のためにこうした活動をしているのかということを改めて思い起こさせるものでした。目の前にあること、できることを地道に行い続けようと思います。

動物愛護は「いのち」の問題であり、この歌を一つのきっかけとして、一人でも多くの人がそれぞれの仕方で、動物たち、「いのち」というものについて考え、それを大切にしてゆくことになればうれしく思います。

  • 202110月のレコーディングの様子について、ピース・アニマルズ・ホームの公式インスタグラムで投稿しています。 
  • 2020年の5月の初回の打ち合わせについては、当ウェブサイトの記事で報告しています。
  • 資料の作成・提供などで北日本放送の的場紀子さんにご助力いただきました。あらためてお礼申し上げます。